怪奇大作戦のシナリオ製作に関するメモ

パーフェクトLD-BOXの解説書に記載されたデータを元に,間違っている部分は訂正してあります


[シナリオメモ]


昭和43年5月31日[チャレンジャー(または恐怖人間)]
(注:怪奇大作戦の企画タイトル)
細い手砂田量爾
その受話器を外すな浅間紅児(キャンセル)
死神と話した男たち佐々木守
(企画タイトル:恐怖人間)
フランケン1968金城哲夫
霧の神話(プロット)市川森一

昭和43年6月25日[チャレンジャー(または恐怖人間)]
海王奇談金城哲夫
恐怖のチャンネルNo.5福田純
(企画タイトル:恐怖人間)
殺人回路市川森一

昭和43年7月26日[怪奇大作戦]
人喰い蛾金城哲夫 第1話
壁ぬけ男上原正三 第2話

昭和43年8月27日
白い顔金城哲夫/上原正三 第3話・共作
死神の子守唄佐々木守 第5話
恐怖の電話佐々木守 第4話
(準備稿題名:死神と話した男たち)
半魚人(プロット)市川森一

昭和43年9月10日
青い血を吐く女若槻文三(準備稿)

昭和43年9月26日
吸血地獄編金城哲夫 第6話
青い血の女若槻文三 第7話
光る通り魔上原正三/市川森一 第8話・共作
平城京のミイラ石堂淑朗 準備稿
誘拐魔(仮題)高橋辰雄?

昭和43年10月28日
散歩する首若槻文三 第9話
ジャガーの眼は赤い高橋辰雄 第10話
氷の死刑台若槻文三 第12話
オヤスミナサイ藤川桂介 第14話
霧の童話上原正三 第13話
死を呼ぶ電波福田純 第10話

昭和43年11月27日
水棲人間上原正三 第15話
呪いの壺石堂淑朗 第16話
消えた仏像佐々木守 第17話
かまいたち上原正三 第18話
伝説の海須川栄三 第20話
幻の死神田辺虎男 第19話
ジャガーの眼は赤い若槻文三 第10話
(ジャガーの眼は赤い・直し手伝い)

昭和43年12月26日
死者がささやく若槻文三 第20話
こうもり男上原正三 第21話
殺人回路市川森一 第22話
死を配達する男X若槻文三(キャンセル)
殺人回路福田純 第22話
(市川脚本改定に依るため)

昭和44年1月4日
花粉と美女石堂淑朗(準備稿)
美女と花粉石堂淑朗(1.6決定稿)

昭和44年1月16日
狂気人間山浦弘靖

[金城哲夫の企画ノートより]

金城の残したノートに記載された検討会議のメモには,怪奇大作戦の企画として次のようなことが書かれている.


昭和43年1月12日

チャレンジャー,サイエンサー

  • 科学サスペンス(人間恐怖シリーズ)
  • 時代設定  現代
  • 対象  3〜12歳を中心とする一般家庭
  • 放送日  日曜日 19:00-19:30
  • 一話完結 30分 カラー
  • 東宝作品 ガス人間,電送人間,液体人間のSFサスペンスシリーズ
  • 科学の裏側からの挑戦 [悪対正]対立
誕生

科学警察庁に3人の優れた科学捜査班があった.科学を悪に利用しようとするものと対立する組織で,チームワークが良く頭脳も優れていた.武器を最後のギリギリまで使用せず,人間の知恵と行動力で解決することを目的とした.

彼らは,科学が発達するあまり置き忘れた“人間性”回復の担い手である.ドラマは歪められた人間心理の生み出す非情な姿を映しながら,いつの時代でもヒューマニティが根本であることを謳いたいのである.

  • 松任谷(24歳) ヒーロー
  • 小林(36歳) 智,科学力
  • 川合(50歳) 驚くべき体力を持った老人,人生

  • 敵は常に科学を悪用する者!
      不特定多数:復讐・私怨・権力欲・狂的・殺人狂・世界征服マニア・物欲・悪質な妨害・盗・魔がさす

  • ウルトラQシリーズではない
  • ウルトラマンやセブンのようなスーパーヒーローは登場しない
  • 怪獣や宇宙人は登場しないが,科学の生き生きとした怪物はしばしば登場する
  • 派手な特撮シーンはないが,サスペンス一杯の,じわーっと恐怖に手に汗握る場合あり
  • 素材36話分用意のこと
  • 専門家から話を聞く会を持つ 3月上旬円谷プロでセッティングする
      ・古代生物研究家 ・物理学
  • 怪奇類の参考書を探す
  • 科学類の参考書を探す

昭和43年2月27日

  • 高年齢層を狙うと全ての視聴率が低くなる
  • ぬいぐるみを武田側極力避けて欲しいとの要望あり
  • 怪奇・恐怖を押す線と科学心理を押す線
  • 現代科学で得られる現象・事象を対象に取り上げる
  • 怪生物,怪植物,リアリティを重視する,科学性のアプローチ
  • 最大の問題
      面白いストーリー ◎シナリオライター 登場人物の性格
  • 小道具のメカニズムを大切に ◎演出家

キャスティングに関しては,企画段階では,原保美/小林昭二/小橋玲子の3人は決定していたが,岸田森/勝呂誉/松山省二についてはまだ名前が挙がっておらず,高橋幸治/石立鉄男/高橋元太郎の名前が挙がっていた.

左記のシナリオタイトルについて注意深く読むと,決定稿になってから後にタイトルが変わっているものがある.

  • 「吸血地獄編」→「吸血地獄」
  • 「水棲人間」→「24年目の復讐」
  • 「消えた仏像」→「京都買います」
  • 「狂気人間」→「狂鬼人間」
また,決定稿になったにも関わらず放映されなかったものもあり興味深い(「伝説の海」).


初期のシナリオの一部及び決定稿でありながら放映されなかったシナリオについて,その要約を以下にまとめておく.


チャレンジャー・細い手

今村という男に因縁をつけて路地裏で脅していたチンピラが死んだ.首を4重に細い鞭のようなものを巻き付けられての窒息死である.実は今村は謎の組織により誘拐監禁されて「軟体人間」になっていたのだった.手足はもとより体中がぐにゃぐにゃになり伸び縮みし,これによりチンピラを絞め殺したのだ.

盗みをはたらき警察に追われた今村はビルの屋上に手を伸ばして伸び上がり,逃げ込む.追う警察とSRIは,花瓶が置かれた一室に踏み込む.花瓶の中に入り込んでいた軟体人間が手を伸ばし,のぞき込んだ竜崎を襲う.捕まった今村は告白する.

「誘拐されて奥多摩の山中に連れていかれ,3ヶ月間監禁されて実験された.」
「人間軟体化の実験で,その実験が成功したおかげですき間から逃げることができた」
その証言の山小屋に警察が出向くと,小屋は突然爆発.謎の組織は闇のまま.



恐怖人間・死神と話した男たち

「恐怖の電話」の原作であるが,ラストが少し違う.

突然電話が鳴る.一同はっと見つめる.

さおり:「馬鹿みたい.事件はもう終わったんでしょ」手を伸ばす.
 野村:「まてまて,おれにまかせろ.はい,こちら… 何?てんぷらそば3つにきつねうどん2つ,バッキャロ,うちは蕎麦屋じゃねぇや」

ガシャン,と電話を切る.



チャレンジャー・フランケン1968

登場人物が放映版とは異なっている.

  • 虎井兵馬 28歳
  • 竜崎京助 24歳
  • 猪熊栄三 21歳
  • 的矢 忠 47歳
  • 古川さおり 19歳
  • 町村警部

SRI専用車に関する記載がある.外見は普通.内部は新兵器と捜査器具,無線装置,それに加えてSRI犬(ペス)も乗っている.(子供向けを意識していたと思われる)

銀座で時価300万円相当のダイヤが盗まれた.警官が駆けつけると犯人はビルの側面に吸い付きうごめいていた.追いかけた警官が発砲した弾が当たっても死なず,ビルから飛び降りても起き上がり逃走した.残された指紋から阿久沢という大泥棒が犯人と断定されたが,阿久沢はすでに死亡しており,死体は城北大学医学部に解剖用として保管されていたはずだが,城北大学医学部助手の金田は阿久沢の死体が盗まれたという.

盗まれたダイヤを質入れに来た男がいるという情報を受けて現場に急行する警察とSRI.逃げる男に虎井はスプレー式の化学銃を発射.男はぐったりする.この化学銃はケミカル・メース=麻酔銃(人喰い蛾パイロット版の前にここですでに登場している).が,再び男は逃走する.今度はスカンク・ガン=臭気銃を発射したところ男の背中に命中して,ペスがその匂いを頼りに犯人を追う.犯人は車に乗り逃走するが,ペスがさらに追う.ペスには電波発信機が取り付けてありSRI専用車はペスの電波を捉えて追跡する.(ちょっとこの設定には無理がある)

事件の主犯は城北大学の梶田教授の研究室の助手の金田であった.阿久沢という犯罪人の死体を盗み出し,サイボーグ化して甦らせ盗みをさせていたのだ.金田はドイツに留学して世界一の外科医のチンメルマンの研究室で学びたいと切望していた.金田はドイツに行くために逃走中に阿久沢を車から振り落とす.翌日空港に向かう車の中で運転する金田を背後から突然阿久沢が襲う.車はガードレールに衝突し炎上.海に落下する.

ラストシーンで虎井(牧)がつぶやく.
「世界に飛躍できるのは,人間性を大切にする頭脳だけだ.悪い種は芽を出す前につみとらなければいかんのだ…」



恐怖人間・恐怖のチャンネルNO.5(準備稿)

「死を呼ぶ電波」の原作.内容も殆ど同じである.



平城京のミイラ(準備稿)

近畿運輸KKワンマン社長:大川淳三には娘のるり子がいた.るり子は古都に憧れていた(美弥子的).彼女の婚約者である時夫は畿内大学の研究所でミイラを研究している.研究対象は黄金に輝く長屋王のミイラである.

淳三は時夫とるり子の結婚に猛反対する.ある夜,るり子の前に長屋王が当時の姿そのままに現れて消えた.そして別の日,近畿運輸所属のタンカーの進む方向に,巨大な金色のミイラが海の上をゆっくりと船に向かって歩いてくる.船はこれを避けようとして座礁する.知らせを聞いた淳三が飛ばす車の運転手も突然巨大なミイラが道の真ん中に立っているのを見て急ハンドルを切り,崖から海に転落し淳三は死亡する.

長屋王のミイラを覆う金箔は宇宙線を吸収する力を持っており,この金に集まった宇宙線が,ミイラの腐敗を防いできたのだった.古代の奇跡.そしてこの金箔の粉を飲むと宇宙線が体内に蓄積される.すると精神は錯乱状態になり幻覚を生みだすである.時夫は近畿運輸をささいな理由でクビになった3人をそそのかし,金箔を被害者に飲ませた後にミイラの話をし,幻覚を見させていたのだった.

奈良の歴史的に重要な地区が宅地のために次々と破壊されていく.これを防ぐために時夫は大川淳三の財産に目をつけ,るり子の好みを利用してミイラの幻影を見せ結婚しようとした.淳三の不正の金を歴史の研究に使うためであった.(この部分のコンセプトは「京都買います」に通じる)

ラストシーンに印象的なセリフ.

    的矢:「目的のためには手段を選ばないのか」
    時夫:「馬鹿を言うな!この世の何処に目的のために手段を選ばない奴がいるか!アメリカを見ろ!ソ連を見ろ!」



誘拐魔(準備稿)

「ジャガーの眼は赤い」の原作であり,ストーリーは放映版とほぼ同じである. このシナリオには「ホログラフィ」ではなく「フォノグラフィ」と書かれている.



伝説の海(決定稿)

夜の瀬戸内海.休暇中の三沢と野村が釣り船から釣り糸を垂れている.するとあたりに変な匂いがしたかと思うと,突如,海面が明るく輝いて1枚の青畳に乗った老僧が現れる.あれは平家の亡霊の仕業だと騒ぐ船頭の源吉.同じような亡霊騒ぎが続き,怪事件としてSRIは調査を開始する.

そして調査中の三沢の前に真弓と名乗る娘が現れ,津村伸夫という男が失踪しているので探して欲しいと依頼する.真弓は伸夫のフィアンセで,伸夫は船頭源吉の息子であった.

再び怪事件が起こった.今度は山を切り崩した土砂を満載したトラックの前に,巨大なカブトガニが現れ,驚いた運転手が急ハンドルを切ってダンプが横転した.実はこの一連の事件は土建屋の木村が仕組んだトリックであった.伸夫は木村の仕事の手伝いをしていたが,あくどい手口を知り過ぎてしまったため邪魔になり木村に殺されてしまったのだ.

そして伸夫の遺体を埋めた場所は源吉が所有する山で,源吉が絶対に手放さないと考えていたのに,競合の大和土建に山を売ってしまったので,このままでは遺体が見つかってしまう為に山を崩させまいと妨害していたのだった.

妨害手段として木村はオプチカル・ガスを用いていた.このガスは日本陸軍が開発した無色透明のガスで,それを通すと拡大レンズと同じ効果を示す.これで巨大な幻影を見せていたのだった.



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