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三叉神経痛

a.病態・治療
三叉神経痛は,神経起始部において血管などの異常攣曲により神経が圧迫されて軸索が脱髄することが原因とされる.トリガー領域への軽い触覚などの痛みを誘発しない求心路刺激が,脱髄した神経軸索部において神経線維間伝達により痛覚伝達線維に移行し(エファプス伝達),痛みとして認識されることが推察されている1).時に血管でなく腫瘍が三叉神経を圧迫していることがある2).また開頭所見でも原因が特定されない場合が少なからず存在する.
神経学的検査により器質的疾患を鑑別診断できることは少なく,診察の際にはMRI検査をルーチン化しておく診療体制が望ましい3).さらに責任血管を同定するためにMRAを施行することもあるが,同定困難な場合もある.
三叉神経痛を適切に管理できる治療法は①カルバマゼピンを代表とする薬物療法 ②三叉神経ブロック ③手術(微小血管減圧術など)④γナイフである.三叉神経痛は,重篤になると食事や会話が不能となり日常生活は極度に制限される.前述した4通りの三叉神経痛治療法には一長一短があり,どれをどの時点で選択するかは経験者の判断にゆだねなくてはならない.速やかに専門施設に紹介することが望ましい.
三叉神経痛は,発症してしばらくの間は発作と寛解を繰り返し,特に初回発作は数週間から数ヵ月の間症状が続いた後,半年から1年以上も続く寛解期に入る4).よって治療は侵襲の少ない薬物療法から始めるべきである.抗てんかん薬であるカルバマゼピンは三叉神経痛の特効薬といわれており第一選択薬となる.三叉神経核,特に脊髄路核のニューロンの活動性を抑制し,シナプス伝達を抑制することにより神経痛発作の発現を抑えると考えられている5).100~200mg/日から開始し症状に応じて漸増する.投与回数は2~4回/日に分けるが,症例により至適な投与パターンに調節する.1日600mg投与でなお効果のない時や副作用で内服継続が困難な場合は他の治療法を考慮する.カルバマゼピンは至適血中濃度の範囲が狭く中毒量に接近しやすいため5),特に投与初期はきめ細やかな投与量の調節が必要である.副作用として一般的なものは初期に高頻度で出現する眠気,ふらつき,眩暈,皮疹,嘔気,嘔吐などである.その他重篤な合併症として再生不良性貧血,無顆粒球症,溶血性貧血,赤芽球癖,血小板減少,肝機能障害,中毒疹などがあるので,長期投与者には定期的な血液検査が必要である.カルバマゼピン以外の薬物療法としては,バクロフェン,クロナゼパム,フェニトイン,バルプロ酸などがあげられるが,いずれも効果はカルバマゼピンに劣る.漢方薬を使用するという報告もある.
三叉神経ブロックは,感覚刺激の入力を遮断するだけで,疼痛を起こしている小脳橋角部に操作を加えることなしに鎮痛が得られる.神経ブロックは3本の枝に対する末梢神経ブロックと三叉神経節に対するガッセル神経節ブロックがある.神経ブロックは以下のような状況で考慮される.
神経ブロックが極めて有用と考えられる状況
1.激しい神経痛のため緊急に除痛が必要である
2.手術療法術後またはγナイフ後の再発例で, カルバマゼピンが
無効または服用できない
3. カルバマゼピンが無効または服用できない患者で,手術療法
びγナイフ療法を希望しない
4.高齢・合併症のため手術療法に耐えられない
5.過去行われた神経ブロックに対して満足感がある
神経ブロックが比較的有用と考えられる状況
1.眼窩下神経領域や前頭神経領域の三叉神経痛で,比較的低侵襲
でブロックが行える
2. γナイフ治療後,効果が発現するまでの除痛
3.術前検査で責任病変の明らかでないもの4.両側三叉神経痛(手術やγナイフでは両側の除痛は困難)
神経ブロック以外の治療を考慮すべき状況
1.腫瘍が痛みの原因である
2.三叉神経ブロックが解剖学的条件より困難である
3.若年発症の三叉神経痛
4.第一枝三叉神経痛で眼窩上神経ブロックが無効である
5. ブロックによる疼痛やブロック後の感覚低下を好まない三叉神経痛原因療法と呼べる治療法が神経血管減圧術であり,圧迫血管を三叉神経のentryzoneから離し,再接触を避けるようにする手術である.成功すると長期に渡る痛みの寛解が得られるが,長期観察すると3分の1以上の手術例で神経痛が再発するとの報告がある6).侵襲的であり高齢者,poorrisk患者には適さないことも多い7).γナイフは,三叉神経節に対し放射線をピンポイントで照射して,神経機能を温存しつつ除痛する手技で,低侵襲で奏功率の高い治療法として注目されている.痛みの消失例は56~74%,改善例は16~22%といわれている8).長期成績については不明だが,約半数で再発するといわれている9).
b.神経ブロック治療指針4,10-13)
三叉神経ブロックは,局麻薬を使って末梢枝ブロックを反復して行うこともあるが,症状が遷延する場合は速やかに罹患枝の神経破壊処置を考慮し,高濃度局麻薬,神経破壊薬を用いてブロックを行うべきである.高濃度局麻薬は,リドカイン,ジブカイン,テトラカインなどを使用し,その神経毒性により不可逆的に神経を遮断する.神経破壊は,アルコール,フェノール,グリセリンなどを使用する化学的な方法と高周波熱凝固などで行う物理的な方法がある.
神経ブロックの長所は,比較的簡単な設備で行うことができ,直ちに鎮痛を得ることができる点にある.欠点は,感覚低下,感覚異常などが起こりうることである.鎮痛効果期間は,神経破壊薬を使用した場合,末梢枝ブロックでは6ヵ月から数年,神経節ブロックではそれ以上の鎮痛期間が期待できる.
①前頭神経ブロック
前額部,上眼瞼にトリガーを有する痛みに対して行う眼窩上神経ブロックと内眼角部,鼻背部にトリガーを有する痛みに対して行う滑車上神経ブロックをあわせて前頭神経ブロックという.
アルコールを用いて浸潤ブロックを行うのが一般的であるが,電気的にそれぞれの神経を探索し高周波で熱凝固することも可能である.末梢枝をブロックしても除痛ができない場合,三叉神経節ブロックをすることがあるが,まれに視力障害を起こす可能性があり注意を要する.
②眼窩下神経ブロック
上口唇や鼻翼にトリガーをもつ痛みに対して行う.第2枝領域の三叉神経痛の半数以上はこのブロックで治療可能である.このブロックで除痛不可能な場合や眼窩下孔の形によってブロックの効果が不充分な場合は,上顎神経ブロックまたは三叉神経節ブロックが適応となる.
③上顎神経ブロック
上顎臼歯部,こめかみにトリガーをもつ痛みに対して行う.ブロックの効果が不充分な場合は,三叉神経節ブロックが適応となる.
④下顎神経ブロック
第3枝領域の三叉神経痛に適応がある.おとがい部に痛みを訴えるものが多いが,おとがい神経ブロックのみで疼痛管理できるものは少なく,より効果の高い下顎神経ブロックまたはガッセル神経節ブロックを施行することが望ましい.しかし舌の感覚も低下するので,もし舌の感覚を温存したい場合にはおとがい神経ブロックが適応となる.
③ガッセル神経節ブロック
末梢枝でのブロックで除痛が不可能な例や複枝罹患の場合が適応となる.薬液(アルコール,ジブカイン,グリセリンなど)を注入する方法と高周波熱凝固法が一般的であり,全身状態の不良な例や高齢者にも安全に行えるという利点を持つ.特にスライター針で行う三叉神経節高周波熱凝固法は,罹患枝を支配する神経節に針先をおくことで選択的に神経凝固が可能である.照射角度を変えられる透視装置が必要である.高齢者が多く,ブロック開始前より血圧が高い場合や血圧上昇が危倶される場合があるが,そのような例には前もって降圧薬を用い,また神経質な患者には抗不安薬,鎮痛薬の前投与も考慮する.またブロックの苦痛を最小限に抑えることを目的に,調節性に富む静脈麻酔薬などをブロック中の鎮静に用いることもある.
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※「ペインクリニック治療指針」から抜粋


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