政府は2016年1月から、行政手続きを個人の自宅のパソコンで一括処理するシステムを運用する方針だ。15年1月の利用開始を計画する社会保障と税の共通番号(マイナンバー)を使い、結婚や転居、退職時などに必要な複数の届け出をインターネットで同時にできるようにする。個人番号カードの定着を目指すとともに、消費税率引き上げをにらみ共通番号を低所得層向け支援などの基盤とする狙いもある。
政府は今の通常国会に社会保障と税の共通番号制度に関する法案を提出している。審議には消費増税法案の扱いを軸に与野党間の調整が不可欠だ。共通番号のシステム開発を巡り数千億円の予想が出るなど与党内でも「費用がかかり過ぎる」との批判がある。実現までのハードルは多い。
法案が成立すれば15年1月から国民に「マイナンバー」を割り当てる。16年1月から段階的に、年金や雇用保険、税の申告など93種類を対象として、番号を入力し作業すると複数の手続きを一括できるようにする。
例えば転居のとき、番号を使って自治体に転入届を出すと、年金の受け取りや奨学金の返済などで住所が自動で変わるようになる。転居に伴う手続きは最多で26種類あり、7つの行政機関がかかわるという。国や自治体に申請書類を送ったり出向いたりする手間が省ければ、官民合計で1千億円のコスト削減につながるとの試算がある。法人も使えるようにする。
行政側からサービスの情報提供や手続き漏れの注意喚起をする仕組みも設ける。将来は確定申告の案をパソコンに表示し、画面上の確認と訂正だけで申告が終わるサービスも検討する。
年金保険料の納付実績や納税記録の個人情報はパソコンで一覧できる。郵送で届く「ねんきん定期便」を、いつでも確認できるような形だ。
共通番号については、情報漏れや不正利用を心配する声が多い。情報保護の徹底を目的に個人が入力する共通番号を、すべて別の符号に変換して行政機関に送信する。1件ごとに異なる符号で処理が進むため、行政機関側は共通番号と手続きを関連付けられない。
個人情報の照会についてパソコンで確認できるシステムにする。マイナンバーによる個人情報は原則として、第三者に提供できない。日本年金機構ではない行政機関が年金情報を閲覧しているような場合、違法性を問われる可能性がある。
政府は消費増税法案を通常国会に提出し、15年10月に消費税率を10%にする計画だ。この際、低所得層の負担を減らす策として、税額控除と給付を組み合わせた制度を検討している。給付先を確定するなど適切な運用には所得を把握するための共通番号が必要となる。
日本経済新聞WEB刊から転載
▼共通番号制度 社会保障や税金の管理に使う番号を国民一人ひとりに割り振る制度。政府は2015年1月の導入を目指している。所得などの情報を正確につかみ、年金や介護保険、税申告などの手続きを進めやすくするのが主な目的だ。
多くの行政手続きを1つの番号で処理する利便性も狙う。事務の効率化によるコストの削減も目指す。一方で個人情報の漏洩などプライバシー保護の観点では問題が多いと懸念する声もある。











